2016年11月アーカイブ

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          No.169   わにとコーヒー 

 

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「あっ犬のウンチ踏んづけちゃった。」

「違うよ~それ銀杏の実だよ。」

そんな笑い声や喚声が聞こえてきたのは "旅するテアトル" と題し、

演じる役者さんとそれを見る観客がストーリーにそって徒歩で場所を変えながら演じ、

またそれを観賞するという正に "動く劇場" のひとコマ。

中世の衣裳を見にまとった男性が太鼓をたたきながら登場すると

黒いベレー帽、そして黒い服を身にまとった主人公が生家から出て来ました。

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ナレーターの「皆さん、静かに!」という合図で始まった

プロスペーロ アルピーニ氏のエジプトの旅の始まりです。

ここはヴィチェンツァ県のマロスティカ市、ここに今では

イタリア人の生活に欠かせないものを初めてヨーロッパに持ち帰った人物がいます。

それがプロスペーロ アルピーニ氏、

11月23日はちょうど没後400年の記念すべき日でした。

医者であり大変研究熱心な植物学者であったまさに彼が、

ヨーロッパに初めてコーヒーの木を持ち帰った人物なのです。

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植物の世界の有生生殖の先駆者であり、パドヴァ大学を卒業し医者になるも、

植物学への情熱は一向に冷めませんでした。

そんなある日、ヴェネツィア共和国の派遣大使として任命を受けた

ヴェネツィア人貴族ジョルジョ氏の「おかかえ」医師として指名され、

エジプトのカイロ行きの推薦を受けるのです。

金銭的にゆとりの無かったプロスペーロには

植物学を研究するのに願ってもないビッグチャンスでした。 

 

帰国してからも何度もエジプトに足を運び更なる研究を続け、

数々の薬用植物を持ち帰っては研究に没頭しました。

その中にコーヒーの木があったのです。

パドヴァの植物園の最高責任者として任命を受け薬理学/薬物学の教べんをとりました。

その時代は今のようにコーヒーは至福の時を楽しむ嗜好品としてでは無く、

あくまでも薬用として研究されていたのです。

中々絵の方も達者だったようで、研究材料として持ち帰った植物は

細かい所までよく描写されています。 

 

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所変わって街角にある老舗の薬局屋さん前、

エジプトからわにを持ち帰り、その脂肪はとある治療にいいんだと説得している

プロスペーロと疑い深い薬屋の店主のやり取りのシーンです。

事実、この薬局の中には今でもプロスペーロがエジプトの旅から持って帰った

本物のわにのはく製が店内に飾られています。

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"旅するテアトル" は時間の経過と共に観客も増えて行きました。

テアトルの幕を閉じたのはエスプレッソコーヒーの無料サービス、

町の中心のチェス広場にお店を構えるコーヒー豆屋さんのご主人の粋な計い。

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中世の衣裳を身にまとい手際良く次々とエスプレッソをサーヴしていきます。

酸味が少ないまろやかな味、クリーミーな泡がぶ厚くて本当に美味しかった!

この豆の種類はその名もプロスペーロアルピーニ、いつでも誰でも買い求めることが出来ます。 

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初めてのエジプト旅行から帰った後、出資者となったプロスペーロには

重要な人物の所へ報告に行ったのです。

中世の衣裳をまとい演じる役者さんのすぐ側で

小っちゃな子どもがピッタリと寄り添うように見上げているそんなシーンも

またこの生きたテアトルの魅力です。 

観客を魅了し、一緒に400年前にタイプスリップさせてくれた役者さんに

心から拍手を送ります。 

Grazie, siete bravissimi!!

 

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                               No.168  えっ?!なんて言うパスタ? 

 

 

随分冷え込むと思ったら一昨日、霜が降りました。 

舗道脇にある木々も随分と "薄着" になってきました。

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ザックザクと積もった落ち葉を見ては焼き芋するのに使ったらどれだけいいだろうなあ、と思ってしまいます。

初冬の風物詩落ち葉たきは今では日本でも見られなくなったのだろうけれど、、、。 

 

青空マーケットには色とりどりのニットの帽子や手袋、

あったか素材のストールやマフラーが沢山並びます。

色のバリエーションによってコーナーが作られたり、

庶民的なマーケットとは言ってもそのディスプレーの仕方はさすがプロ、

ハッとさせられる「見せ方」でお客さんを魅了します。

さすがイタリア! 

テレビでは盛んにのど飴や風邪薬のコマーシャルが流れています。

いやいや、薬に頼らなくてもいいように、日頃から栄養つけて体も動かして健康でいたいもの。

そんな風にイタリアの子ども達だって思っているのです。 

"ピーナおばあちゃんのタリアテッレ" という子ども向けの誰もが知っている歌があるのですが、

「目覚ましが鳴ってる。あ~今日も学校行かなきゃ、勉強もしなきゃいけないし

他にもやること沢山あるし、ハァ~週末になるともうノックアウト。

でもこんな時はピーナおばあちゃんのタリアテッレを食べると元気モリモリ!

挽き肉のソースと一緒に食べればビタミン補給。お薬なんていらないも~ん!」てな具合。

やっぱり食べることは健康管理の儀式なのです。 

 

地球温暖化とは言うけれど、ちゃんと巡り来る季節をありがたく思います。

寒くなったらゼリア叔母さんが編んでくれた毛糸の靴下をはいて

暖をとってあったかくしたり、温かいスープを食べる。

寒くなると余計にじっくり時間をかけた美味しいものが食べたくなります。 

 

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ヴェネト州生まれのパスタ、ビーゴリ。

その昔はクリスマスイヴや金曜日など、食事を節制しなければいけなかった日に食されたものです。

表面はザラザラしていてよ~く目を凝らして見ると小穴がブツブツ、

この特徴がザラザラ感を生んでソースとうまくからむのです。

パスタそのものは歯応えがあるから噛む毎に素材の旨さが口の中にじわ~っと広がってきます。

このパスタを作るには、ビゴラーロといういわゆる昔のパスタ圧搾機が欠かせません。

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パスタマシンという表現よりもまさに漢字三文字で書くのにピッタリな言い方。

ところが今では、このビゴラーロを所有している家庭は非常にまれで

昔の生活様式を伺える博物館へ行けばやっと見ることが出来るといった具合。

生地の材料は薄力粉と卵そして一つまみの塩、これだけ。

寝かせた生地を少しずつ投入する、そして木で出来た本体に座って

ハンドルを一定方向にギュッギュっと回す。

簡単に見えるけれどこれが中々力仕事。

手ごねの生地も固めだから余計に作業が難航するのです。

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出てきたパスタをカットしていくのはお母さん、さすが親子の呼吸が合っています。

こちらのお宅は皆さん食いしん坊だそうで、

このビゴラーロもひいお爺さんの時代のものだそう、まさにお宝です。

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出来たパスタをサラッと粉と合わせてほぐしていきます。 

 

玉葱を薄くスライスしてオリーヴオイルでじっくりと炒めたら

アンチョビまたは鰯を加えるそれを少しトロッとさせたらソースの完成です。

もちろん自家製のボロネーゼソース、鴨肉のソースなども定番の組み合わせ。

太めの乾燥パスタもあるけれど、それとは全くの別物。

ビーゴリは標準語、お国訛りで言うと「リ」のところがの間くらいの発音になる、

この発音が又難しいんだなぁ。

 

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          No.167 おいしいパンの町

 

街を歩けばいたる所にパン屋の看板が掲げられている、

食事用のパンは勿論、おやつ用に軽食用にとプチトマトがたっぷりのったフォカッチャや

揚げたてのパンツァロッティ(パン生地を薄く丸くのばして中にトマトソースとモッツァレッラを入れて

植物油オイルで揚げたもの)なんていうプーリアの名物にもお目にかかれる。

ここはアルタムーラ/ALTAMURA、プーリア州の州都バーリにある空港から南西へ約60キロその道のり、

土の色が随分と面白い色ということに気がつく。

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その昔、町の中心には共同の釜があって職人さんがパンを焼いていたのだそう。

古代ローマ時代の詩人はブリンディズィへの道のりの途中

アルタムーラで旨いパンに出くわした、等という伝説も残っているらしい。 

Denominazione di Origine Protetta=DOP(保護指定原産地表示): 欧州連合が定めた、

イタリアのパン業界でいち早くこの認定を受けた "お墨付き"のパン、表面に貼ってあるマークが目印だ。

 

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職人さんが次々と手際良くこねた生地をカットしていく。

焼き上がった時の重さは500グラムを下回ってはならないし、

表面のカリッとした部分は3ミリ以下であってはいけない。

また、パンが含む水分は33%を下回ってはいけないというように厳しい「おきて」があるのだ。

外側のパリパリした部分、この色を土地の人は原料と同じ麦色という。

イタリア人らしい表現だ。

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また、物凄く大きくていびつな形をしているのが忘れられないのも特徴だ。

薪を使った焼き釜で焼くのにも美味しさの隠し味があるに違いない。

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ジュゼッペお父さんがぶ厚いパンをわざわざ潰して見せた。

弾力があるのでしっかりと元に戻るのだ。

噛み応えのあるパン、ゆっくりと時間をかけて天然酵母で発酵させるので、消化がいいという。

カリッとした外側とは対照的に中はしっとりしていて正に黄金色をしている。

テレビで見た、夏一面の麦畑と全く同じ色だ。

自然がおりなす食べ物の色って本当にドキドキさせてくれる。

アルタムーラはもちろん、ここからからほど近い小麦粉の産地ムルジェ、

これらの地域の小麦を原料にするのが「おいしいアルタムーラのDOP」パンの第一条件なのだ。

ジュゼッペお父さんはこのパン作りに「秘密」は無いという、

今は皆パン作りを知っている、大事なのは原料だと強調する。

上質の硬質小麦の産地でもあるこの土地であるが故生まれたアルタムーラのパンは納得の美味しさだ。

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新鮮さだけがこのパンの「売り」では無い。

数日経ってもこのパンはおいしいのだ。

その昔アルタムーラ近郊の羊飼いや農家の人は数日、また2週間も

家族と離れ家畜の世話や農作業に従事せざるを得ないこともしばしばで、

それには保存が効いて栄養価も高いこのパンはうってつけだったのだ。

「勉強家、研究熱心」であるジュゼッペお父さんは世界中のフードショー、イベントに参加したり

テレビ出演したりとアルタムーラDOPのパンの名を世界にアピールし尽力してきたまさにパン一筋の人。

10年前と変わらぬ笑顔で迎えてくれたジュゼッペお父さんの情熱はとどまる所を知らない。

パン作りの話をしている時の目はとてもキラキラしていた。

 

 

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